書架の細充 2023ー04

文人墨客編集部より、文芸評論家であり書評家である細谷正充氏が気になる本を不定期に紹介する「書架之細充」をお送りします。

今回、ご紹介いたしますのは
「魔女と傭兵」
著者: 超法規的かえる
表画イラスト: 叶世べんち
カバーデザイン:AFTERGLOW
GCN文庫
発売日2023年05月19日
価格858円 (本体780円+税10%)
ISBN 9784867164242
https://gcnovels.jp/book/1514#purchasable

超法規的かえる(これがペンネーム)の『魔女と傭兵』は、ネットの小説投稿サイト「小説家になろう」掲載を経て、商業出版された異世界ファンタジーである。といっても今風の〝なろう小説〟らしくなく、魔女と傭兵のコンビが魔獣や人間相手に暴れまわる内容は、かつてのライトノベルを彷彿させる。個人的には、そこが大変気に入っているのだ。

魔女狩りに参加した傭兵のジグ=クレイン。殺し合いの果てに、魔女のシアーシャに雇われることになる。この大陸は魔女の安息の地にならぬと、異大陸に渡った二人。しかし到着早々、魔獣の手痛い洗礼を受けた。人々も当たり前のように魔術を使う。どうやら元いた大陸とは、まったく常識が違うようだ。そして魔獣討伐を生業とするギルドで冒険者となったシアーシャと、傭兵として彼女を護衛するジグは、さまざまな騒動や事件とかかわっていく。

人間とかかわらないように生きてきたため、社会性の乏しいシアーシャ。世慣れているが、何かあれば荒事も辞さないジグ。いろいろと常識の通じない異大陸にとまどうが、いざとなれば力押し。誰が相手だろうが、どんな魔獣だろうが、激しいバトルを繰り広げる。これこれ、これだよ。がっちりした設定のファンタジー世界をベースにした、心の昂るアクションが読みたかったんだよ。

もちろんアクションだけではなく、しだいに成長していくシアーシャや、時に殺し合いを演じながら人間関係を広げていくジンの姿も注目ポイント。現在連載中のネット版を知っているからいうが、今後、ふたりの戦いはさらに激しくなる。だから本書に巻数表示はないが、二巻、三巻と刊行を続行してほしいのである。

by 細谷正充