第二回 細谷賞! 作品紹介 4
2019年10月 第二回細谷賞が決定しました。
受賞作品と書評を順次紹介していきます。
『髪結百花』泉ゆたか
個人的な意見になるが、デビュー作は才能を見せるもの、受賞後第一作はプロ作家としてやっていける力量を見せるものだと思っている。その観点から泉ゆたかの『髪結百花』を評価するなら、プロ作家の力量を遺憾なく発揮したといえるだろう。もう少し、詳しく説明したい。作品の本質的な部分は変わらないが、デビュー作の『お師匠さま、整いました!』は、軽いタッチの作品であった。それに対して、女髪結の生き方を、吉原の遊女たちと絡めて描いた本書は、重厚な書き方をしている。作者としては、冒険であったろう。恐れや迷いがあったはずだ。
それを押し込め、ひとりの女の肖像を、深く彫り込んだのである。ヒロインの元旦那を始めとする、脇役の扱いも達者。単行本の帯に私が寄せた「ここまで優れた作品を上梓した作者を、ただただ絶賛したい」という推薦文に偽りなし。まさに絶賛すべき作品なのである。