第二回 細谷賞 作品紹介 3

2019年12月16日 - ニュース

2019年10月 第二回細谷賞が決定しました。
受賞作品と書評を順次紹介していきます。

『ファミリーランド』澤村伊智
 作者はホラー小説の優れた書き手としてすでに高く評価されている。しかし、その地位に安住するつもりはないようだ。
 今年、長篇ミステリー『予言の島』と、SF短篇集『ファミリーランド』を刊行し、自己の世界を広げているのである。その積極的な姿勢が頼もしい。
 しかも作品の内容が凄かった。『予言の島』もよかったが、本書にはぶっ飛んだ。まず冒頭の「コンピューターお義母さん」だが、題材が嫁姑問題である。実にドメスティックだが、これが切れ味鋭く、さらにイヤな後味を堪能できる秀作になっている。
 その他、デザインチャイルドが当たり前になった世界の絶望を巧みに表現した「翼の折れた金魚」や、宇宙人とのファーストコンタクトに卑近なオチが付く「今夜宇宙船の見える丘に」など、どれも読みごたえあり。
 ひとりでも多くの人に、このイヤすぎる悪夢を体験してもらいたいのだ。