第二回 細谷賞! 作品紹介 5

2019年12月27日 - ニュース

2019年10月 第二回細谷賞が決定しました。
受賞作品と書評を順次紹介していきます。

第五回は『マーダーズ』長浦京
作者は第二長篇『リボルバー・リリー』で、第十九回大藪晴彦賞を受賞している。いまさら細谷正充賞の対象にする必要もないだろうと思いながら、本書を手に取った。しかし一読、考えを変えた。従来の作品の先に、踏み込んでいたからだ。
女刑事と商社マンが、コンビを組んで過去の事件を追う。物語の大枠は、さして珍しくない。しかし、ふたりの主人公は、どちらも過去に人を殺しながら、何食わぬ顔をして生きている人物であった。その史実を知る、ある女性に脅され、しぶしぶ捜査をすることになる。なんとも異様な設定だ。
このストーリーを通じて作者は、人生の選択肢に殺人のある人間や、人を殺すことの意味を掘り下げていく。前二作も殺人者の物語であったが、その地点からさらなる深化を遂げた作品になっているのだ。常に前進する作家の作品は面白い。そのことほ本書は証明しているのだ。

講談社 ISBN-9784065147276 定価1,800円(税別)